リコード法の甲状腺治療(その3各種抗体検査)

甲状腺を攻撃する抗体について、書きます。

橋本病とか、バセドー氏病とか、自己免疫疾患とか、耳にしたことがある方は多いと思います。しかし、ここでもまたくどいようですが、機能性医学では細かく診断していくので、一般の診療で病名がつかない程度の検査値の異常も、最適値と比べてしっかり評価して対処していきます。場合によっては、それ以上、つまり検査値に異常が見られなくても体調や状況から判断して治療する場合もあります。

前回書いた甲状腺機能検査に加えて、甲状腺の異常を疑う場合に行ってほしい検査は、TPO、TgAb、TRAb、TsAbです。一般診療では、TSHやT4(free T4)やT3(free T3)が、ひろ~い基準値(一般診療の基準値)に入っている場合、これらの抗体検査は決してしてくれないと思います。しかし、100%元気だという方以外、またTSHやT4(free T4)やT3(free T3)や Reverse T3の検査結果が、機能性医学の最適値から外れている方は、検査してみる価値があります。体調が絶好調でない原因や、甲状腺ホルモンの値が最適値でない理由は、甲状腺がらみの『自己免疫疾患』の前段階の可能性があるからです。そして、これらのどれかの値が高い(抗体がある)場合は、機能性医学の治療を丁寧に行いながら、定期的にどのように推移しているかを再検査して治療効果を見ていきます。

(治療は、次回以降に書く予定です。)

抗体って何?自己免疫疾患って甲状腺と関係あるの?についてみていきましょう。

甲状腺の病気のほとんどは、実は自己免疫疾患です。つまり、免疫系がおかしくなって甲状腺を攻撃することで起こります。免疫システムは、体に害を及ぼす可能性のあるバクテリアやウイルスなどの異物を検出して排除するために抗体を使用します。自己免疫疾患になると、免疫システムは自分の一部(この場合は甲状腺)を標的とした抗体を作ってしまうのです。ですから、甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)とサイログロブリン抗体(TgAb)という最も一般的な2種類の甲状腺抗体の検査を必ず行なった方が良いのです。これらの抗体が見られれば、自己免疫機能障害が起きていることがわかります。時には、実際の甲状腺機能障害(症状やTSH,T3,T4等の異常)が起こる何年も前に抗体が現れることがあります。つまり、抗体はあっても、甲状腺がまだ免疫系に攻撃されていない、あるいはダメージを受けるほどではないということです。その場合でも、機能性医学に従って自己免疫機能障害を元に戻すことで、甲状腺へのダメージを防げることが多いのです。

なぜ免疫系がおかしくなるのでしょうか?甲状腺を攻撃するってどういう事でしょうか?

甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)とサイログロブリン抗体(TgAb)などの様な甲状腺抗体は、自分の免疫系が甲状腺を標的にして作ったものです。なぜ免疫系が甲状腺を脅威と判断して攻撃をしかけたのでしょうか?それはまだ未解決の謎ですが、自己の免疫系が何らかの嫌がらせを受けていると感じてしまい、圧倒された結果間違ったターゲットに向けて発射し始めるような、自己の体に起こっている絶え間ない炎症に対する攻撃と関係があるだろうことはわかっています。

さらに嫌~なことに、1つの自己免疫疾患にかかると、他の疾患にかかる可能性が3倍になってしまうことがわかっています。もしあなたが甲状腺機能障害(機能亢進でも低下でも)と診断されたら、必ず医師に、甲状腺ホルモンレベルに加えて各種甲状腺抗体をチェックしてもらいましょう。診断を受けていなくて、機能性医学の基準値(最適値)を外れている状態でしたら、おそらく一般診療の医師は抗体検査まではしてくれないと思うので、その場合はBFLクリニック(※保険診療は行っていません。全て自由診療です。)にお問い合わせください。

甲状腺抗体の日本語名を書きますね。

TPO:(抗)甲状腺ペルオキシダーゼ抗体、またはTPO抗体とも言います。
TgAb:(抗)サイログロブリン抗体
これらの抗体の少なくとも1つが陽性であれば橋本病(機能低下症)の可能性が高いと判断します。ただ、この2種類の抗体はバセドウ氏病(機能亢進症)でも陽性になることが多く、甲状腺機能検査とあわせて判断します。

TRAb:抗TSHレセプター抗体
TSAb:TSH刺激性レセプター抗体。甲状腺刺激抗体ともいう。TRAbとは検査方法が違います。
TRAbとTsAbは、甲状腺を刺激する抗体です。これらの抗体が甲状腺を刺激することで甲状腺ホルモンが過剰に分泌される事になります。保険診療ではどちらか一方の検査のみ保険で行えます。

甲状腺の状態を見るためには、上記甲状腺抗体4種類だけでは、片手落ち??

そうなんです。いよいよ治療に関連してきますので、次回にこの内容はまわします。

では、次回の内容を楽しみにされている事と思いますが、その前に、、、
以下の、明らかに体に悪そうな事は、機能性医学云々ではなくても、まず甲状腺を守るために最初に取り組む必要がある事をお伝えしておきま~~す。
1,ストレス状態の解消
2,良好な睡眠
3,グルテンフリー、カゼインフリー
4,激しい運動を避ける
5,飲酒をやめる

本日のオマケ

当クリニック関係者の結果を、本人の了解を得たうえで公表します。
   Free T3 Serum 3.2 – 4.2 pg/mlが最適値ですが ⇒ 2.38↓でした。
   Reverse T3 Serum < 20 ng/dl 同様に ⇒ 32↑
   Free T3:Reverse T3 > 20 ⇒ 7.4↓
   Free T4 Serum 1.3 – 1.8 ng/dl ⇒ 1.09↓
   TSH Serum < 2 uIU/ml ⇒ 0.91
   そして抗体はというと、、、
   TPO: 抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体 ⇒ 3.0 IU/mL
   TgAb抗サイログロブリン抗体 ⇒ 74.3↑ IU/mL
   TRAb:抗TSHレセプター抗体 ⇒ 0.5未満 IU/L
   TSAb:TSH刺激性レセプター抗体 ⇒ 102 %

上記の結果をどう読みますか?
体調は、元気はほぼ100%、でも時々短時間の上室性頻拍または、動悸感がありました。
Free T3:Reverse T3 の比は、7.4↓とかなり低下しています。ここから、甲状腺ホルモンのバランスとしては、ブレーキがかかっている状態が推定されます。また free T3も free T4も低いのにTSHは基準値内の結果でした。下垂体は甲状腺ホルモンは足りていると認識しているように見えます。そして、抗サイログロブリン抗体が74.3と上昇しています。何らかの機序で、甲状腺を攻撃する抗体が出始めているという事になります。動悸感については、性ホルモンとの関係が気になるところですが、はっきりしないものの排卵のあたりで感じる様な気がするとのことでした。一時的な動悸感は、(その2で書いたように)排卵後のエストロゲンの低下方向の動きにより、TBGが少なくなり、甲状腺機能亢進状態が一時的に起こったのかもしれません。あるいは、抗サイログロブリン抗体が、基本は甲状腺を抑制的に攻撃しているのでしょうが、その作用が一定しないで時に刺激性に攻撃している可能性もあります。私は、こちらが起こっているのではないかと予想しています。

そこで、してもらった方法(治療)は、、、、。
さらにこのあとの追加の検査結果を見て、グルテンフリーを完璧にしてもらう事でした。それにカゼインフリーも。この辺りは、次回以降その理由を書いていきます。お楽しみに。