ApoE4遺伝子について知ろう。(その1)

ApoE4遺伝子を持っている方は、アルツハイマー病を発症しやすい。つまり、『ApoE4遺伝子は、アルツハイマー病の危険因子である』ということは、少しずつ知られてきているようです。とはいえ、私個人の印象としては、まだまだ広く知られていると言うほどではないと思いますし、夫(ApoE4/3)は、とくに、『多くの人にこの遺伝子検査を行ってほしい』と切望しています。

その理由は、『この遺伝子タイプを持っていることがわかれば、さらに適した対処の方法があるから』です。親のどちらかが認知症であれば、なおさらです。認知症を発症した下の世代が、この検査を行い、発症前の早いうちから『自分事として予防に取り組むこと』で、予防できる可能性が高いからです。

リコード法開発者のブレデセン先生も、30代40代の症状のまだ出る前に、認知機能に関連する項目の検査(ApoE検査など)をして結果に基づいて、適切な予防を行う事が大切と言っています。当院では、ApoE遺伝子検査を含めた予防のための検査一式(プリコード法検査)と診察を、税込み125,169円で行っています。これには、初診・再診・メールサポート(計2ヶ月間)・アポロヘルスプリコード基本検査が含まれています。私は、これにオプションでsdLDL検査(7,150円)を追加していただくのがベストと思います。

ApoE遺伝子タイプだけが知れれば良いという方は、ApoE遺伝子検査だけで診察なしの場合は16,500円です。採血のための来院は必要です。結果説明などの診察を希望される場合は、30分間5,500円で、お手軽リコード法遠隔診療を受診してください。

さて、料金についてはこのくらいにして、この後は、『ApoE4とは、なんぞや?』という事について、なるべくわかりやすく書いてみたいと思います。

ちょっとその前に、ブレデセン先生の経歴から。
ブレデセン先生は『リコード法開発者』として有名ですが、もともとはUCLAの研究者でした。多くの研究チームと様々なテーマで共同研究を行っていたのだそうですが、その一つがApoE4です。そして、ブレデセン博士が関与した重要な発見の一つは、ApoE4がとても広範な作用を持つことを突き止めたことです。私たちの体にはゲノム上でさまざまな相互作用があります。そして、このApoE4は脂質タンパク質で、遺伝子上にある1700ものさまざまな遺伝子のうちの、広範囲の遺伝子について、読むか読まないか、どの程度読むかを決める場所(プロモーター領域)に結合して、炎症に影響を与え成長因子、サーチュイン、微小管形成にも影響を与えています。まだまだApoE4によるさまざまな影響や経路は、色々な研究者により調べられている最中です。

『ApoE4とは、何ぞや?』の前に、もう一つ、『スニップス(SNPs)』について説明をしておきたいと思います。
遺伝情報が格納されているDNAの一部がいわゆる遺伝子です。そしてDNAは、4つのヌクレオチド(G,C,T,A)によって構成されています。Aは常にTと対になり、Cは常にGと対になります。この小さなヌクレオチドが約30億個、すべての細胞に存在し、DNAを構成しています。『スニップス(SNPs)』とは、DNAの中の遺伝子の小さな変化のことで、たった1文字の変化の事を言います。AがGに、CがTに切り替わるときに、これを一塩基多型『スニップス(SNPs)』と呼んでいます。1文字違っても、作られる蛋白による健康上の違いがない場合もあれば、大きな違いがある場合もあります。『スニップス(SNPs)』の例としては、茶色い目と青い目の違いがあります。青い目の方が紫外線の影響を受けやすいので、この『スニップス(SNPs)』は、健康上の違いがあると言えますね。

ApoEの、2か3か4かは、健康上の違いが出る『スニップス(SNPs)』です。

やっとここからApoE4について、説明したいところですが、もう一つその前に説明しなくてはならないことがあります。(お待たせばかりして、ごめんなさい。)

『人間の遺伝子は、あらゆる蛋白質、細胞の輸送体の設計図(情報)である。』という事です。人間の体にはなんと約25,000もの遺伝子があります。脳や健康に重要な輸送体、ビタミンやミネラルのレベルに影響を与える輸送体は、遺伝子の情報を元に細胞で作られます。したがって、いろいろな遺伝情報によって、ビタミンやミネラルの濃度も影響をうけます。つまるところ、特定のビタミンやミネラルが血液脳関門を通過し、脳に入るのを許可する方法も、遺伝子が必要な情報を輸送体の作成を通じて細胞に教えているとも言えます。また、アミロイドを分解・処理する酵素の情報もあります。BDNFやその他の神経成長因子など、脳を成長させるための成長因子の情報も持っています。炎症のシグナルとなるサイトカインの情報。気分や記憶に関連する神経伝達物質、ホルモン、酵素、そしてこれらの受容体におけるすべての活性化因子の情報も遺伝子は情報として持っています。そして、体内の毒素や老廃物を除去するための、さまざまな浄化作用のある分子の情報もです。

もう少し、その前に~、、、を続けたい気持ちもありますが、あとは複雑になりすぎるので省略します。さて、では、『ApoE4とは、何ぞや?』を説明します。

ApoE4は遅発性アルツハイマー病の主な危険因子です。ApoE4を1つ持っていると発症率は約2〜3倍になり、2つ持っていると11〜13倍になります。そして、全人口の16〜20%の人がApoE4を持っています。80歳以前に認知機能が低下する人の約70%はApoE4が原因である事がわかっています。もしも、ApoE4を持っていることを発症前の30~40代に知って、ブレデセン先生が示すプリコード法を行ったら、認知症は激減するのではないかと、私は考えます。社会的にとても重要なことだと思います。
(本日は長くなってしまいましたので。ここまでです。次回は、ApoE2や3や4の分子的な特徴の違いについて書いてみたいと思っています。)