リコード法の甲状腺治療(その4甲状腺抗体みたいなもの)

『甲状腺抗体みたいなもの』って何でしょう?
ずばり、グルテン(小麦に入っています)やカゼイン(乳製品に入っています)の事です。私の場合は、それに加えてどうやら卵も甲状腺抗体みたいなものらしいです。正確には、これらに対する抗体が、『甲状腺抗体みたいなもの』なのです。

甲状腺を攻撃する甲状腺抗体と構造が似ているため、体の中にグルテンやカゼインや、私の場合は(ちょっとしつこい?)卵に対する抗体ができると、甲状腺抗体の様に甲状腺を攻撃しだすのです。

機能性医学では、グルテンやカゼインの除去は、甲状腺の障害や自己免疫疾患の有無、認知機能の低下や心疾患など各種体の不調のあるなしに関わらず、基本中の基本です。

では、その理由を解説してみます。

まず、押さえておきたい理由は、グルテンはリーキーガット(腸漏れ)の主な原因の1つだからです。グルテンは腸の一部を破壊し、消化機能を低下させ、多くの健康問題を引き起こす危険性があります。そしてこれは、何も特別な病気の人だけの話しではないのです。

小麦などグルテンを含む食べ物を食べると、グルテンは胃の中を通り抜けて小腸に達します。小腸でグルテンが分解されると、「グリアジン」というグルテンの一部の成分が上皮細胞と結びつきます。すると、「ゾヌリン」というタンパク質が小腸から過剰に分泌されます。このゾヌリンには、小腸の細胞と細胞の隙間を開けて通過をよくする作用があるため、リーキーガット(腸漏れ)が起こってしまうという理屈です。上皮細胞の隙間を封印しているタイトジャンクションがほどけてしまうのです。

グルテン以外にも、カゼイン、アルコール、繊維質の少ない食事も、タイトジャンクションを緩めてしまう作用がある食品ですので、注意しましょう。その他、食物アレルギー、腸内環境の乱れ、カンジダ菌の増殖などの腸内感染症、化学物質などの環境毒素、抗生物質や避妊薬などの薬、精神的なストレスなどでも、腸壁バリアがダメージを受けやすく、リーキーガットを引き起こす原因と言えます。

では、リーキーガットが起こるとどうなるのでしょうか?

体は防御反応でグルテンに対する抗体を作ります。そして、免疫系は記憶しますので、グルテンを摂取(あるいは皮膚に付着)すると適応性免疫系が反応してグルテンに対する抗体を作り、それが、炎症反応を起こすのです。一般的な反応で多くの人に起こっています。グルテンだけでなくカゼインでも起こりますし、私の場合は卵にも抗体を作っていました。しかも極端に(怖)。

ちなみに、グルテンは、食べ物(小麦、大麦、ライ麦、スペルト小麦などの穀物)に入っているだけでなく、生活の色々な場面で登場するので要注意です。では、グルテンは何に入っているかを確認しておきましょう。グルテンは、パンや焼き菓子、パスタなどに含まれているのはもちろんですが、驚くほど多くの加工食品にも含まれています。その中には、スープやホットドッグ、醤油、さらにはサプリメントや薬など、グルテンを結合剤や保存料として使用している食品に含まれています。また、多くのパーソナルケア製品にもグルテンが含まれています。つまり、お風呂で使うシャンプーやリンスやボディーソープ、その他、保湿剤を肌に塗っているという方は、その保湿剤に入っている場合もあります。

リーキーガットは、消化されていない食べ物や、腸壁に留まっているはずの毒素や微生物を血液中に入れてしまいます。体の内部(ちなみに腸管内は体の外部です)に、これらの物が入ってくると、免疫システムが警戒態勢に入るのも無理はありません。脅威は次々と押し寄せ、体は慢性的な炎症状態に陥り、自己免疫疾患を発症する可能性があります。残念なことに、グルテンが原因でリーキーガットになってしまったために、甲状腺疾患を発症する可能性も高くなってしまいます。

そして、いよいよ甲状腺疾患との関係です。分子擬態、免疫の勘違いが『甲状腺抗体みたいなもの』の本質です。

分子擬態:免疫の勘違い

身体が危険な外敵にさらされるたびに、免疫系はその構造、特にタンパク質の配列を記憶し、その異物、病原体や毒素に対する完璧な防御策を開発し、将来的に認識できるようにしています。しかし、免疫系の認識システムは完璧ではありません。ある分子の構造やタンパク質の配列が他の分子と十分に類似していると、免疫系は騙されてそっくりな分子を攻撃してしまうことがあるのです。分子擬態は、自己免疫反応の最も一般的な誘因の1つであり、自分の体の組織と何らかの異物を混同してしまうのです。これが免疫の勘違いです。

(上の分子擬態の説明図は、AMY先生の本からお借りしました。)
甲状腺にとって残念なことに、甲状腺には共通の『そっくりさん』がいて、不正な自己免疫攻撃を受ける危険性があります。それがグルテンです。グルテンというタンパク質は甲状腺組織のタンパク質と構造的に似ているので、免疫系がグルテンを攻撃しようとすると、甲状腺に大変なことがおこります。さらに、グルテンに反応する人の50%は、乳製品に含まれるタンパク質であるカゼインに対しても分子擬態を起こします。これは交差反応としても知られています。50%ではなく100%という研究者もいます。

さらに悪いことに、腸壁の透過性が高ければ高いほど、部分的に消化されたグルテンや乳製品が血流にたくさん漏れ入ります。免疫系からすると、攻撃しなければならない相手がどこかしこに大勢いるという事になります。そして、免疫システムは、働きすぎて、酷使されて、四方八方に敵がいると考え始め、乳製品、グルテン、甲状腺組織を同じ力で攻撃してしまう事になります。

興味深いことに、このような甲状腺への攻撃は、2つの全く異なる結果(甲状腺機能を抑制したり、刺激したり)をもたらします。

橋本病の場合、免疫系の攻撃が甲状腺の正常な働きを阻害し、代謝全体を遅らせることになります。免疫系の攻撃に対して対処しない場合、何年も甲状腺組織が免疫系に攻撃され続けて、甲状腺はますますダメージを受け、甲状腺の機能がさらに低下していきます。そのため、甲状腺ホルモンの分泌量も年々少なくなり、甲状腺ホルモンの補充量を増やし続けなければならないという事になります。

一方バセドウ病(機能亢進)の場合、免疫システムは甲状腺抗体があたかも甲状腺刺激ホルモンの分子であるかのように振る舞い、甲状腺のホルモンを過剰に分泌させ、代謝を過剰にさせます。

最後に確認、大切な情報です。分子擬態によって、甲状腺に限らず各種臓器を痛めつける場合があります。ですから、機能性医学の治療では、たとえ自己免疫疾患でなくても、グルテンと乳製品を食生活から取り除くことが必要です。

 

糖尿病、高脂血症、肥満、認知症、筋肉痛、関節痛、胸やけ、息切れ、腹痛、抜け毛、消化不良、不眠症、記憶力低下、不安感、疲労感、口臭、神経過敏、食欲低下、じんましん、喘息、アトピー性皮膚炎、過敏性腸症候群、お腹の張りなど、多くの症状や疾患があれば、すぐにもグルテンフリー・カゼインフリーを始めることをお勧めします。