骨粗鬆症⑤バイオアイデンティカル ホルモン編〜薬を使わないで治療しよう〜
骨粗鬆症とホルモンの関係について本日はご説明いたします。
老化の原因には、酸化ストレスや遺伝子など様々な原因があるという説がありますが、その中でもよく言われるのが「ホルモン低下は老化による結果ではなく、原因」つまりホルモン低下におって老化がおこる、という説です。
実際に、ホルモン補充療法をして、生き生きとした活力を再び手に入れたり、若返られている方を見ると、最適なホルモンの状態が人の若々しさにいかに大事かを実感します。
少し話が逸れましたが、骨粗鬆症も長い間、閉経によるエストロゲンの急激な低下が原因だと考えられてきました。しかし、最近の研究によるとエストロゲン以外のホルモンも、骨の健康を保つために重要な役割を果たしていることがわかってきています。
卵巣からはエストロゲンの他に、プロゲステロン、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、テストステロンの4つのホルモンが分泌されます。
閉経による卵巣機能の低下では、エストロゲン、プロゲステロン、DHEAが著しく低下することがわかっており、
エストロゲン単独ではなく、これらのホルモンを総合的に補充することが、骨粗鬆症の予防と治療に有益である可能性があると考えられています。
(テストステロンに関しては、減る場合もありますが、ほとんど変化しないこともよくあります。)
ちなみに、ここでいうホルモン補充は、バイオアイデンティカルホルモンと言って、私たちの体でもともと作っている生体ホルモンと全く同じ分子構造を持つホルモンの補充のことです。
(バイオアイデンティカルホルモンはナチュラルホルモンとも言ったりします。またbioidentical hormone replacement therapyの略でBHRTと書いたりもします。)
前置きが長くなりましたが、各ホルモンについてご説明していきます。
【エストロゲン】
エストロゲンは骨吸収を阻害することで、閉経後女性の骨密度を維持します。
よく保険診療で使われる人工エストロゲンは、骨粗鬆症の予防には役立ちますが、乳がんや脳卒中、心筋梗塞や深部静脈血栓症、認知症の発生率を増加させることが判明しているので、エストロゲンを補充する必要がある場合(エストロゲンが低下している場合)は、バイオアイデンティカルホルモンを補充するようにしてください。
またバイオアイデンティカルのエストロゲンには、抗がん作用のあるエストリオール(人体に自然に発生するエストロゲンの形態の1つ)が含まれているため、エストロゲンの癌促進効果とバランスをとり、癌を増やすリスクを減らすと考えられています。
【デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)】
主に副腎で、また精巣と卵巣でも量は少ないですが産生されるアンドロゲンで、DHEAは部分的にエストロゲンとテストステロンに代謝されます。
またDHEAは25才以降で徐々に低下し、人工エストロゲンの投与でさらに低下します。
DHEAはそれ自体がホルモン作用を持つため、プロゲステロンなどの値を上昇させることが知られているため、稀に単独でホルモン補充療法として使用されることもあります。
DHEAの投与は骨芽細胞の活性を刺激し、DHEAが高いほど、骨塩量が高くなるという論文があります。また、倦怠感やうつ、脱力感、記憶力の低下、筋肉の喪失などの幅広い加齢に伴う症状を改善することが知られています。
DHEAの投与により、甲状腺ホルモンの作用が増強するように見えることがあるため、甲状腺ホルモンを服用している場合は量を減らす必要があることに注意する必要があります。
【プロゲステロン】
プロゲステロンは、骨芽細胞の活動を刺激し、骨形成を促進します。
100人の閉経後の女性(平均年齢65歳、範囲38〜83歳)に、プロゲステロンクリームと、必要な場合エストロゲンを投与、また食事の改善と定期的な運動、カルシウム(800mg /日)とビタミンD(350-400IU /日)の補給をした研究では、平均骨密度が15.4% 増加しました。
【テストステロン】
テストステロンは骨芽細胞の活動を刺激します。
男性では、遊離テストステロンレベルが高い人は、骨密度が高い傾向があります。テストステロンが低い男性に、テストステロン補充療法をしたところ、骨密度が維持または増加し、骨量減少を逆転させることが報告されています。
女性では閉経などによりテストステロンが低下する場合もありますが、低下しにくい場合もあるため、その方のテストステロンレベルに合った処方が必要です。
今回は性ホルモンと骨粗鬆症の関係をご紹介いたしました。
ホルモン補充療法は、ほとんどの閉経前後の女性のQOLを上げてくれる治療です。(ほとんどの方のホルモンバランスに乱れがあり、それを改善すると体調が良くなります)
私は更年期症状が怖いので、将来は、閉経の数年前からホルモン補充療法を行う予定で、今からホルモン値を測定して、適切なタイミングで開始しようと考えています。