高濃度ビタミンC点滴で重症コロナウイルス感染症の劇的な改善を認めた症例報告

ミシガン州立大学からの、高濃度ビタミンC点滴が重症コロナウイルス感染症の患者さんの病状を劇的に改善したという症例報告の論文をご紹介します。

今のところ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して確率された治療方法はありません。

 

高濃度ビタミンC点滴は、主に死亡原因となる急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に対して、サイトカインストームの抑制を含む複数の機序で全身の炎症を軽減し、肺損傷を予防することがわかっています。

 

またビタミンCは何十年にもわたる研究により、免疫細胞機能の必須成分であり、さまざまな免疫系のメカニズムにおいて重要な役割を果たしていることが示されています。

 

最近のメタアナリシスやランダム比較化試験(信頼度の高い論文)では、ビタミンCを投与すると、重症敗血症とARDSの患者の人工呼吸の時間と、ICU滞在期間を短縮することが明らかになりました。

 

このような背景から、ビタミンCの点滴がコロナウイルス感染症に効果があると考えられており、今回の症例でも患者さんが重症化した後、ご家族の希望によってビタミンC点滴が開始されたようです。

 

前置きが長くなりましたが、発熱や咳、息切れなどので来院されコロナウイルス感染症と診断された74才の女性の症例です。

 

救急室に来院される2日前から、同様の症状があったそうです。

今までかかったことがあるご病気は、高血圧症、肥満、寛解している重症筋無力症、および変形性関節症にて1週間前に右膝関節の置換術を行なっていましたが、術後の経過は良好でした。

 

来院時、血圧は保たれていましたが、微熱があり、酸素飽和度の低下(87%)と、胸部X線では肺炎像が認められました。

当初、酸素(2L)と肺炎に対して抗生剤の治療が開始されました(セフェピムおよびレボフロキサシン)。3日目に、持病の重症筋無力症が増悪したとして免疫グロブリン静注療法を4日間開始しました。

 

入院4日目には、酸素の必要量は最大10Lまで増加しました。

そこでヒドロキシクロロキンと、アジスロマイシン、硫酸亜鉛、ビタミンC 2g経口投与が開始されましたが、6日目に状態は急激に悪化し、酸素必要量は15 Lに達しました。

血圧も下がりショック状態となったため、緊急挿管され、昇圧剤も開始されました。サイトカインストームに対処するためにコルヒチンも投与されました。(写真左) 

入院7日目に、家族の希望で1日11gの高容量の持続ビタミンC点滴が開始されました。

その後、臨床状態はゆっくりと改善し始め、昇圧剤は2日後に終了、5日後には胸部レントゲンで肺炎の劇的な改善を認めました。

 

その後も呼吸状態は改善し続け、ビタミンCを開始してから10日後には酸素飽和度は92%となり、胸部レントゲンもほぼ正常に戻りました(写真右)。

 

論文の筆者は、最初は家族に頼まれる形でビタミンC点滴を始めたものの、ビタミンCビタミンC点滴を開始してからの急速な病状の回復と人工呼吸・ICU滞在期間の短縮という点で、重症のCOVID-19患者における高用量の静脈内ビタミンCの潜在的な利点を強調しています。

 

PDF:https://www.amjcaserep.com/abstract/index/idArt/925521